イスラエル・テルアビブ
起業大国と言われるほどスタートアップが盛んなこの国でお会いしたのは、Million Timesというオンライン上で投資家と起業家を繋ぐプラットフォームを運営しているANIWOの植野力さん。
今回は去年の2014年に、日本人3人で始めたというこのプロダクトについて苦労したこと、これからどうサービスを伸ばしていくのかについて、
オフィスでもあるサムライインキュベートが運営するサムライハウスにてお話を伺ってきました!
スタートアップと投資家を繋ぐMillion Times
−本日はよろしくお願いします!まずはじめに今運営しているサービスの内容を教えて下さい。
「世界中の起業家、アントレプレナーを応援し、投資家、大企業と繋ぐインターネット上のプラットフォームMillion Timesを運営しています。
起業家がやることはたった11枚のスライドをMillion Timesにアップするだけで、投資家はそのアップされたスライドを簡単検索とスライド閲覧で興味のあるスタートアップにMeet!とリクエストを送るだけでアプローチが出来ます。
そして世界中のユーザーはそのスライドを評価できてClap!ボタンで応援することができ、これらの一連の流れで、これまで遠い存在であったスタートアップが日常的なエンターテイメントとして楽しめるようになります。」
イスラエル流人の紹介方法「Everyone knows everyone」
−ありがとうございます。では、起業をしてこのサービスを作っていく中で一番苦労したことは何ですか?
「本当にいろいろあるのですが、個人的には、エンジニアの採用です。
まず現地の採用市場を知らず、候補者に出会うのが難しかったこと、創業メンバーにエンジニアがおらず技量を図るのが難しかったこと、十分な予算がなく出会った候補者の承諾をなかなか得られなかったことが大きな理由です。
最終的には、現地で採用等のコンサルティングをしている方に紹介してもらったLinkedInグループに参加しようとした際に連絡を取っていた、そのグループの管理者で現地スタートアップのCTOの方に紹介していただいたエンジニアを採用することになりました。
かなり特殊な形での採用になりましたが、結果素晴らしいエンジニアと出会うことが出来ました。
イスラエルには「Everyone knows everyone」という有名なフレーズがあり、会った人で、紹介するメリットがあると思えば遠慮なくどんどん紹介したりされたりするのが特徴で、ある意味紹介に次ぐ紹介での採用はイスラエルらしい採用だったなと思います。」
関連記事:イスラエル流・人の紹介方法からみる強固なネットワーク「Everyone knows everyone」
世界をひっくり返して人々を笑顔に。
−現在の仕事の一番のやりがいは何ですか?
「少しやりがいとはずれるかもしれませんが、ビジョンの実現に近づいていることを実感できるときが一番楽しいし頑張れるなって思っています。
そういったタイミングは個人的には二つあって、一つは我々のプラットフォームを通して実際に投資が決まる瞬間です。
特に初回のイベントは鳥肌が立ちました。日本から来て、人を採用してものを作り、プロモーションをして、起業家のインタビューをして、イベント準備をして、ようやく投資が決まった瞬間はとても感慨深かったです。
もう一つは、現地の企業や大学との連携などで自分たちのビジネスが拡大していく瞬間です。
現在も、現地でスタートアップのデータベースを管理している企業との連携を準備していたり、現地の大学内でのコミュニティ開発など、我々のビジネスが拡大していくような業務はやはりやりがいを感じます。」
イスラエル発、世界へ。
−サービスのこれからの展開を出来る範囲で教えて下さい。
「今後は、投資家-起業家間のコミュニケーションの効率化、 (主に日本の)大企業-スタートアップ間の情報格差の解消に注力していこうと思っています。
投資家ではない我々が投資家、VCのポートフォリオを組むことで、起業家が資金調達をしたい際に何度もフォームを入力したりするのではなく我々のプラットフォームを通じて最適な投資家に出会えるようサポートしていきます。
また、オープンイノベーションが盛んになってきた日本企業と、イスラエルのスタートアップの間の情報格差がうむ機会損失、人類の発展にとっての大きな損失を人工知能の技術なども使いながら解消、新たな可能性やイノベーションを生み出していければと考えています。
そのあとロケーションに関してもイスラエル-日本だけでなく、イスラエル-東南アジア間やEU諸国-日本間などへの展開も考えています。」
中東のシリコンバレーテルアビブの環境
−イスラエル、特にテルアビブの働く環境についてはどうですか?
「仕事のスピード感が日本とは全然違いますね。人の紹介も然り、意思決定に関しても然り。あからさまな下心をもって接触してくる人もいるので判断は必要ですが、我々のような新参者にとってすぐに人を紹介しあう文化があるのはとても仕事がしやすいです。
特徴的だと感じたのは中東のシリコンバレーと言われるだけあって国全体が起業家を支援している点です。
行政レベルでは、様々な企業家支援や資金援助があるのに加えて元大統領がスタートアップに1億円を投資したり、国がコワーキングスペースを運営していたりする点が特徴的だと感じます。
また、国民レベルではユダヤ人が自然資源の乏しい中、技術を開発、発展させてきた歴史や迫害の歴史の中で人への投資、コミュニケーションを重要視する国民性でそれらもイスラエルを起業大国にした大きな要因だと思います。
気を付けていることとしては、セキュリティがしっかりしているとはいえ時期や情勢によっては危険なこともあるのでテロに巻き込まれたりしないないようにするなどは日ごろ意識しています。(笑)
幅と深さにこだわる
−最後にイスラエルで起業をしたという視点から日本の若者にメッセージをお願いします。
「月並みではありますが、幅と深さにこだわって様々な経験して、自分が好きなこと、自分はこういうことに熱中できるんだということを見つけてください。
具体的にどんなことをしたいなんていうのはなかなか見つからないと思いますし、そもそもそんなものは死ぬときにならないとわからないもんだとは思うのですが、幅にこだわって勉強でも旅行でも恋愛でもアルバイトでもなんでもいいのですが、色々やることで自分が好きなことや、熱中できることを見つけられると思いますし、見つけられたら今度は深さにこだわってやりきってみると、死ぬまでの時間の間にどのように時間を使いたいかが見えてくるのではないかなと思います。
追加で幅の話と少しかぶりますが少しの教養があると、どこにいても人との出会い、会話の幅がさらに広がると思うので最低限の教養を身につけておくといいと思います。」
インタビューを終えて:日本人発でイスラエルからイノベーションを
イスラエルという名前から連想されるのは、多くの人は紛争や宗教といったものでスタートアップと連想する人はまだまだ少ないんじゃないかと思います。
僕も正直実際に訪れるまで、まさか中東のこの小さな国が数々のイノベーションを起こしている起業大国だとは思いもしませんでした。
このように日本人にはまだまだ注目されていないイスラエルですが、そんな日本人にとって無名なこの国で、今回取材したANIWOは一足先に先陣を切って挑戦している注目すべき日本人発のスタートアップ。
また、Million Timesの目指すところ、スタートアップの文化にエンターテイメントの要素を入れてより身近なものにするというのも面白く、僕自身とても共感しています。
そういう意味でANIWOがこれからどんなイノベーションを起こしていくのか、イスラエルにおける日本のプレゼンスがどう上がっていくのか楽しみなところです。
最後にこれを読んでくれている皆さんに、イスラエルという国はイノベーションが次々と起きているオモシロイ場所という明るい印象になってほしいなと個人的に思うのでした。
植野さん、今回は本当にありがとうございました!