前回の記事、「−日本の英語教育を変えたい。−留学の経験から17歳で株式会社EUGENIC海外進学塾を創業した嶋津幸樹さん vol.1」では嶋津さんの今までの歩みについて話して頂きました。
Vol.2では日本の教育について、そして嶋津さんが目指す教育、これからどんなことを仕掛けていくのかなどを話して頂きます。
✔「偏差値教育+α」
−海外進学塾EUGENICなどを通してこれまで500人以上の生徒を指導してきた嶋津さんの視点から、日本の偏差値教育を変えるためにはどんな教育法がベストだと思いますか?
「日本の教育が間違っているとは思っていません。世界の端っこの島国がこれだけの新興国に成長し世界を轟かせる技術や伝統を作り上げてきた。
ただし偏差値教育+αで学力を判断してほしい。つまり数字以外で人間を選んでほしい。
人間にはそれぞれ適性があり、学力以外でも活躍できるポテンシャルがある。その偏差値では計れない学力をなんらかの形で評価してほしい。
みんながみんな同時期に大学に入る必要もなく、みんながみんな東大を目指す必要も無いんです。」
✔日本人に必要な「英語で論破する力」とは?
−ではそんな嶋津さんが英語を通じて教育をする際に特に心がけていることは?
「英語を話せるようになる教育をするのではなく、自らの意見を確立してそれを理論的に言葉にする力、つまり「英語で論破する力」を身につけてほしいと考えています。
高校2年の時の教科書に坂茂さんという世界で活躍している建築家の方の存在を知り、彼が英語を巧みに使って世界中を論破している姿を目にしました。その時にこの、英語で論破する力は内向き下向きな日本人に欠如している、世界で生きていくために不可欠な技能だと考えたんです。
日本人は他人の意見を聞き入れ、それに共感して上手に付き合う能力はある。ただし、相手に対して本音を言うという部分では遠慮してしまう傾向があります。
和を重んじるという日本の文化を世界では上手に駆使して自分の意見を理論的に言葉にできる力を身につけて欲しいのです。」
✔世界で活躍する原石を発掘し可能性を与えたい
−これまで教育してきた中で一番印象に残っている生徒、または嶋津さんの理想の生徒像を教えて下さい。
「これまで500人以上の中高生を指導してきて、彼らに共通するのは光れば輝く原石を秘めていること。
多種多様なトピックを扱い、様々なアプローチで授業をするプロセスで、生徒はそれぞれ違った反応を見せます。
つまり伸び代がある個性が誰にでもあるということ。日本教育の単一的な授業ではその原石は発掘されずに就職活動まで導かれてしまいます。
そんな原石を磨いて光ったと感じた生徒の一人を紹介します。」
✔フィンランドを決意した一人の生徒
「彼の中学三年の時の成績表は1と2、僕と同じ地元の中学校に通っていて、中学時代スポーツばかりしていた僕にとって親近感があったんです。そんな彼は勉強というものは皆無という状態で入塾しました。
学校の成績という視点からは彼を物語ることはできません。彼のアクティブで社交的な性格、素直で思っていることをすぐ口に出す性格、小学生はみな彼をスーパーマンのように慕い、塾を2倍も3倍も明るくする生徒でした。
そんな彼が受験をするにあたってもちろん僕が仕掛けたのは 英語力の改革。
映像を使い興味を沸かし、盛り上がったところで文法をimplicitに教える。そして憧れを与える。英語ができればこうなる、これもできて、世界でこんなこともできる。
そして彼の英語力は飛躍的に上がり、僕と同じ高校の同じコース(英語科)に進むのです。
EUGENICで世界一周を想定した夏季合宿を行い、世界のあるゆることを取り上げて授業をしました。(参考記事『ゆとり教育世代の英語教育改革〜最先端英語教育①世界一周合宿〜』)
その中のフィンランド教育についての授業をきっかけに彼は動き出しました。そして今、彼は留学先のフィンランドで日本の文化を伝承する活動を始め地元メディアにも取り上げられるようになったんです。
つまり、僕が目指している教育は、
世界で活躍する原石を発掘し可能性を与えること。危機感を持って世界に出て 世界中の優者と議論し意見を交わし日本に刺激を与える。日本の大学しか視野に入れていない学生に世界で活躍するチャンスを与えたい。
世界で活躍できる人材が日本には埋もれているんです。」
✔次なる仕掛けは“海外進学支援”
−では、次に仕掛けようと思っている教育改革について出来る範囲で教えて下さい。
「海外進学を仕向けます。もちろん全員が全員海外に行けというわけではありません。世界の大学も選択肢の一つになってくれればありがたい。
これからの日本にはいろんなブレインが必要です。
日本で当たり前のことが日本で当たり前でなくなる時代が来る。その時に対応する能力を若いうちから身につけてほしい。
現在CELTAの授業の一環でイギリスの大学の語学学校で教えているのですが、日本人として危機感を感じています。中国を始めとするアジアの学生が必死に英語を学び議論し、母国に還元するぞと努力を重ねています。
オックスフォード大学の例を挙げると去年の日本人学部生の数は9名、中国人は649名です。中国の人口が日本の10倍といってもその差は歴然としていますよね。
この現状を打破するには、まず日本の若者が世界に出てこの現状を目の当たりにすること。日本人として考えさせられることが多くあると思います。この世界を見るという機会を日本の中学生高校生に与えていきたい。
そのために海外進学に必要なスキルや情報を早い段階から提供していきたい。現在はそれを支援する「ネイティブ脳™」という教育プログラム開発を行っています。
」
✔日本のゆとり世代へ。
−最後にゆとり世代の僕たち若者にメッセージをお願いします
「ゆとり教育は失敗ではありません。
世界のスポーツ界で活躍している僕らの世代を見ればわかります。いろんな才能が開花した世代です。ゆとり教育は日本が平和だったからこそ出来たことです。
しかし、これからの日本には危機感という言葉が似合ってくる。それは世界に出ればわかる。日本で安定した暮らしを送る日本人を尻目に、中国や韓国などのアジア諸国の若者が必死に英語を勉強し、母国に帰り、母国のために成長を遂げている。
国を代表する若者たちが世界中で議論し母国に貢献している。
これまでの日本は先人たちの活躍で、日本国内で色々なものが賄えました。政治も経済も教育も就職も家族も、みんなが安定して平和で先進的な国として世界中に認められてきました。
しかし、これからはそうはいかない。
今の1億3千万人の人口が2050年にはどうなるのか?人口は3分の2近くになります。そして今の高校生の10%以上が2100年を生きる統計もあります。日本が2100年を迎える時、僕たちの世代がどう生きるかによって、僕たちの子供世代の生き方も変わってくる。
日本の先人が残してくれたThe Beauty of Japanを継承していくのは、僕たちの世代なのです。
まずは世界に出て本当に必要なスキルを認識し、自分の適性を見極め、日本の未来を一緒に創っていきましょう!」
✔インタビューを終えて:平成生まれの教育改革
[caption id="attachment_1325" align="alignnone" width="600"] お話を伺ったカフェにて[/caption]
「日本の英語教育を変えたい」
「英語で論破する力を身につけてほしい」
「世界で活躍できる人材が日本には埋もれている」
いかがだったでしょうか?
2ページにわたり紹介した嶋津さんのインタビューでしたが、“教育”だけでなく“日本”や“海外”と言った大きなトピックにも注目してお話することが出来ました。世界で活躍できるはずの日本人が日本に留まっているという事実に対して、自分なりに考え、アクションを起こし続ける嶋津さん。そこには内に秘めたる大きな思いと信念が感じられました。
近年、日本では詰め込み教育からゆとり教育、そして脱ゆとりと、教育が激動の時代を迎えています。そしてネットでもリアルでも実に様々な教育論が飛び交っています。
この記事では若くして教育界に一石を投じてきた一人の教育者の考えを紹介しましたが、大事なのは、
皆さんがこの記事を見て、そして自分が受けてきた教育を振り返ってみてどう考えるかどうアクションを起こすか?
だと思います。
教育という誰もが考えられるテーマだからこそ。
同じ平成生まれ、そしてゆとり教育を受けた世代として嶋津さんの取り組みはこれからも目が離せません。
嶋津さん今回はありがとうございました!